トピック:「大連市」が注目される理由とは? (所長補佐 菊池礼仁(青森県派遣))
2001年の中国WTO加盟以降、従来は友好親善の色彩の強かった日中の地方間交流も、観光物産等地域産業の振興を目的とした交流が進められるようになっています。その中でも、「大連市」には多くの日系企業が進出しています。日本自治体駐在事務所の数も8にのぼり、上海市に次ぐ多さです。その概要・日本との関わり等について、ご紹介します。
1.概要
中国東北遼東半島の最南端、東経121度(日本との時差1時間)、北緯38度(仙台市相当)に位置し、総面積は約12,500km2(ほぼ新潟県相当)、中心部面積は2,415km2です。
総人口約566万人(2006年3月)、中心部人口274万人(同)であり、総人口のうち約94%が漢族です。年間平均気温10.5℃で、東北地区の中では冬の寒さが厳しくないこと、四季が明瞭であることが特徴として挙げられます。また、起伏に富む地形で、坂が多く道幅も広くないことから、中国他都市と比べて日本に街の雰囲気が似ていると感じられます。
道路網や鉄道網が発達しているほか、東北地区最大の港を有し日本を初め各国との海運航路があります。また、航路も国際線31路線を有し日本にも東京、大阪、名古屋、仙台、富山、広島、福岡への直行便があり、これらの都市に3時間足らずで着くことができます。
2.経済状況
@経済発展への取り組み
1984年の国務院による「沿海開放都市」としての認可と、経済技術開発区の整備開始を契機に外資の進出が加速しました。アジア金融危機によるマイナス成長の局面(1998〜2000年)を乗り越えて、保税区・ハイテクパーク・ダブルDポート・輸出加工区・ソフトウエアパークの設置や、国務院「東北旧工業基地振興政策」の重要拠点としての位置付けなどを活用し、中国東北地方の玄関口・中心都市として経済発展を続けています。
また、現在は、大連港を北東アジアの国際航運センターにするという「1つのセンター」と、石油化学、設備製造、電子情報産業・造船の基地として発展するという「4つの基地」を合言葉に、経済発展の取り組みを進めており、2020年のGDPを2000年の6倍増、1人あたりGDP1.5万ドル以上とすることを目標としています。
A経済状況
GDPは約2,200億人民元で、ここ数年15%程度の高い成長を続けています。貿易面でも、輸出額約124億米ドル・輸入額約110米ドルにのぼります(2005年)。貿易の相手方を国別にみると、輸出入ともに日本が最大の相手方となっています。
特に、ソフト産業の伸びが著しく、2005年の売上額は100億人民元を突破し、これは5年前の約50倍の額となります。この中心が対日業務であり、ソフト輸出の8割以上を日本からのアウトソーシング業務が占めています。
3.日本との関係
@邦人数、日系企業進出状況
大連市の在留邦人数は3,145人(2005年10月)前年比約11%増で、大連日本人学校の生徒数も約200名に達しています。大連市への日本人来訪者数も約30万人(2005年.前年比15%増)にのぼります。
日系企業は、3,000社以上進出しており、大連日本商工会の会員数も600会員(会員数は上海に次ぐ2位)を超えています。なお、近年は製品開発研究部門やIT関連企業の進出が目立つようになっています。
A主な姉妹都市交流・経済交流等
福岡県北九州市と大連市(1979年)、京都府舞鶴市と大連市(1982年)、石川県七尾市と大連市金州区(1986年)、青森県青森市と大連市(2004年)、東京都荒川区と大連市中山区(2006年)の間で、姉妹校流等の取り組みがすすめられているほか、経済面に特化した取り組みとして青森県(2004)や京都府(2006年)等と交流締結するなど、様々な形での交流が進められています。
4.日本の自治体駐在事務所等
@現在設置されている自治体駐在事務所
神奈川県経済貿易事務所(1990年設立)、駐大連北九州市経済事務所(1991年)、新潟県大連経済事務所(1997年)、富山県大連事務所(2004年)、秋田県貿易促進協会大連事務所(2005年)、青森県大連ビジネスサポートセンター(2005年)、岩手県大連経済事務所(2005年)、宮城県大連事務所(2005年)の8事務所が現在設置されており、そのほとんどが、経済面での交流促進を主目的としています。
A近年の動向
2005年以降に一挙に4事務所が設置され「事務所設置ラッシュ」といった様相を呈しています。従来から設置されている事務所は、姉妹交流(北九州市、神奈川県(と遼寧省))や定期船舶路線(新潟港)や定期航空路線(福岡、富山)を持つ自治体がほとんどです。一方、新たに設置したのは東北地域の県で、気候が似ていること、地理的に近いこと、水産(加工)業等の類似産業を持つこと等が、設置の理由となっているようです。
また、設置方法についても、岩手県と宮城県との合同設置、秋田県の現地民間会社への委託、青森県の大連現地報道機関との連携といった特徴を持っています。
ある関係者の「北海道・青森県・岩手県・秋田県は、合同で国内外の事務所を設置しているのに大連は別々になってしまった。地域間競争の激しさのあらわれでもあるのだが、やはり県境を越えて連携して取組んだ方が効果的だ。」とのコメントが印象的でした。なお、事務所を設置していない北海道も北洋銀行大連事務所に職員を派遣しています。
一方、近年閉鎖された事務所もあるなど、事務所の閉鎖や新規設置といった動きが今後ともあり得ると予想されます。
また、これら自治体駐在事務所を設置していないたくさんの自治体が、ミッション団の形成、商談会・展示会の開催等様々な活動を行っています。なお、ソフト・情報関連産業にターゲットを絞った取り組みが見られることが大連ならではの特徴として挙げられます。
5.大連市の豊かな資源・魅力
これだけ多くの日系企業や自治体を惹きつける大連の資源を挙げますと、
@ 日本と戦前からの長い歴史的なつながりがあり、小学校から専門学校や大学まで、日本語教育が盛んで、大連外国語学院をはじめ日本語学科を持つ大学が11もあり、多くの日本語人材を輩出していることが挙げられます。また、日本語教育に限らず、教育程度が高いことと、就業後の定着率が高いことも魅力として挙げられます。
A これまでの経済開発により整備された、交通、電気、通信設備のほか、良好大連港を持つことによる物流面での優位性があるほか、投資プロジェクトに対する行政の「ワンストップサービス」や苦情処理対応などの行政サービスの質も高いと言われています。
B 観光都市として知られ、美しい街並みや海が魅力的なこと、毎年「国際ファッション祭り」が開催される中国のファッション情報発信基地でもあり、「多くの日本人がまた訪れたい!」と感じることが魅力として挙げられます。進出企業の方から、「日本人が多いので、日本向けのビジネスのチャンスが多いこと。また、信頼できるパートナーとなり得る現地企業が既に多数存在すること。」これが魅力だと伺いました。
6.おわりに
他主要都市と同様に賃金が年々高くなってきていること、日本には近い反面、中国大都市からは離れており消費市場として中国を見た場合には地理的な優位性がないこと、「東北の空の玄関」の地位を遼寧省の省都「瀋陽市」と競合しつつあること等の懸念もありますが、東北最大の日系企業集積基地として、今後も発展を続けていくことが期待されます。
特に、世界中のグローバル企業が進出しているソフトウエア産業、コールセンターやカスタマーセンター等のアウトソーシング等の分野では、益々注目されることだと思います。
この日本の多くの自治体が注目する大連市に関する情報は、経済面に関する情報のほか、特色ある日本語教育をはじめとした幅広い分野について、今後もご紹介して参ります。
【参考】大連市ホームページ(http://2003.dl.gov.cn/i18n/jp/index.htm)
中国統計年鑑2006(中華人民共和国国家統計局編)
在瀋陽日本国領事館 在大連出張駐在官事務所「大連概要」
日本貿易振興機構大連事務所「大連市概況」
駐大連北九州市経済事務所(http://www.kfta.or.jp/jimusho.html)
新潟県大連経済事務所(http://www.niigata-bnp.com/dalian/)
富山県大連事務所(http://www.pref.toyama.jp/sections/1005/kannihonkai/jimusho/index.html)
秋田県貿易促進協会大連事務所(http://www.a-trade.or.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=12)
宮城県大連事務所(http://www.pref.miyagi.jp/gb/dalian-office/)
トピック:大連進出企業インタビュー「大連天賜食品有限公司」(所長補佐 宇野和彦(京都府派遣))
3,000を超える日系企業が進出する美しい港町「大連」。今回は、関西地方から中国大連に進出、コンビニの食品、油揚げ、惣菜、レトルト食品等の製造をはじめ、近年は、冷凍惣菜の開発、製造にも着手、従業員350人を抱える「大連天賜食品有限公司」原裕之董事長兼副経理(写真)に、大連でのビジネスや今後の経営戦略等についてお伺いしました。
Q 貴社の中国事業についてお聞かせください。
株式会社京都庵グループの出資により、13年前に大連に進出、2003年に新たにグループ会社として、大連天賜食品有限公司を設立した。油揚げ、惣菜等の製造を行っており、製造量の95%を日本に輸出している。商品の輸出割合は、グループ会社に7割、受託企業への輸出が3割といったところである。また、北京や上海の日系CVS、青島の日系スーパーで販売されているおでんの具「がんも」「鶏肉きんちゃく」も当社の商品である。
Q 今後の中国戦略についてお聞かせください。
今後は中国国内での販売を拡大するとともに、欧米やアジアへの輸出も目指していきたい。現在工場の裏手に現工場と同規模の新工場を建設中であり、来年には稼動する予定となっている。更に輸出・受託生産向けに、3年後を目処にもう1棟工場を建設したい。また、大連に多くあるコンビニエンスストア「快客(QUICK)」でおでんの販売が当月より決定している。現在当社の製造する商品は大連では売られておらず、社員が大連で自社の商品が売られているのを見れば、会社全体の士気もあがると考えており、是非取り組んでいきたい。
Q どうして進出先として大連を選択されたのですか?
日本の工場に大連から研修生を受け入れたことがあり、又、中国東北3省の輸出港である大連に決定をした。大豆の値段自体は日本とほとんど変わらないが、大豆は黒龍江省・吉林から大連に集まるので、調達が非常に容易である。また、大連は顧客確保にも便利である。大連は日本からも近く、特に食品業界はスピードが肝心。飛行機2時間、輸出コンテナも出荷から日本到着通関まで1週間程度で回転できる利便性がある。また、大連は街も整備さており、綺麗であるし、インフラ面においても電力にも比較的余裕がある。
Q 中国進出にあたり苦労した点をお聞かせください。
中国に進出して13年になるが、最初の5〜6年は無我夢中で地元や周囲との交流も弱く、中国の特有のトラブルも多くあり苦労が絶えなかった。しかし、「大連天賜食品有限公司」設立の際には、進出後10年の経験・人脈形成が役に立ち、政府機関をはじめ様々な業界に人脈に助けられた。中国では人脈は極めて大事であり、この人脈により紹介してもらった当社所在地の鎮(末端行政区画単位)の長は、「鎮が工場を建て、その工場を当社がリースするという方式」を提案してくれた。一般に初期投資もリスクヘッジを検討し、極力初期投資を抑える形で契約できたことは、非常に優位に交渉できたと考えている。現在は中国での仕事環境に大変満足している。
Q 最近は従業員を集めるのに苦労すると聞きましたが?
当社の工員の給料は他の企業と大きく変わらない。給料以外に寮と食事を提供している。以前は募集をかければ、すぐに人が集まったが、最近はなかなか集まらなくなってきた。しかし、今の状態が普通であり、以前が集まりすぎたと考えている。人材を確保するために、当社では、今の社員を大事にすることを心がけている。そうすれば、今いる従業員が当社で働きたい人を連れてきてくれる。また、福利厚生として、日本への研修制度、体育祭・慰安旅行の実施(今年は日帰りで大連市内の遊園地を訪問)など、この会社は楽しいと思える環境を作りだすことに努めている。更に、1年に1回その年に結婚した人を集めて、私が仲人代わりを勤め、結婚式を行っている。忘年会なども従業員が楽しめる事は全て取り入れるようにしている。従業員が喜んでもらい、素晴らしい会社と感じ一体感が生むことが何より大事である。
Q 地方自治体からどのような支援があれば有益だと思われますか?
自治体などが進出企業の支援窓口となり、仕事の信頼の置ける相手先パートナーなどを実際に紹介してくれれば、進出の足がかりになると思う。
また、当社の日本工場では、中国人労働者は大変評判がよい。日本人よりよっぽどよく働くと評判である。また、油揚げという日本独自の品物であるのにも関わらず、現在では当社の中国人技術者の方が日本人にも劣らない技術を保有している。最近では弊社の技術者を日本に送ってほしいという要望もきている。食品業界全体において在留資格許可証明書の取得が難しく苦労している。真面目に営業している企業には、是非、在留資格認定証明書を出してもらえるよう、政府間同士で働きかけをしてもらうと企業側としては大変ありがたい。
Q 中国ビジネスに対するアドバイスをお願いいたします。
まず中国側に技術だけもっていかれる可能性があることに注意が必要である。私がこれから中国でビジネスを開始するなら、大連や青島にでも根を下ろし、経験と人脈を持ち合わせた日本企業(駐在員が管理をしている)と委託契約をする。中国に進出して成功するのは時間と人材投与が必要であり、早期投資効果を望むのであれば進出している企業と組むのが理想であると考える。
〜大連天賜食品有限公司を訪問して〜
大連天賜食品有限公司は市内から車で30分、大連郊外、甘井子区大連湾鎮花島村に位置してします。大連市街から同社に向かうタクシーに乗った際、「お前達の行き先にはタクシーはいないぞ。待っていてやろうか?」と運転手に声をかけらました。タクシー料金+60元(1,000円程度)を要求され、「タクシーがいない訳がない」と思い、「考えとくよ」と適当に答えていましたが、花島村に着くと確かにタクシーは1台も見当たりません・・・・。運転手に「絶対に待っていてくれ」と頼みつつ、経済開発区でもない、タクシーが1台もいない郊外にまで日系企業が進出していることに、色々な意味で心強く感じました。
大きく発展を遂げる大連は、物流面での利便性はもちろん、日本語学習熱の高い親日的な都市でもあります。日系企業の進出条件を満たすとともに、日本への企業誘致活動を行うにも魅力的な大連は、日本の地方自治体にとって、今後ますます重要な都市となっていくことは間違いありません。
活動報告:中国人高校生訪日団の歓送会に参加して〜青少年交流による日中間の友好促進に期待〜(所長補佐 菅原大介(仙台市派遣))
去る11月13日北京市で開催された中国人高校生訪日団の歓送会に参加してきました(在中国日本大使館主催)。「日中21世紀交流事業」の一環として中国人高校生短期招へいが行われており、この歓送会は、その第4陣として訪日する中国人高校生200名を激励するために開催されたものです。会には、宮本雄二日本国駐中国大使や中国教育部の担当者らも出席されていました。
本事業において、日本側は今年度中に中国人高校生1,100人を10日間程度の短期滞在で招待することとしています。この日集まった高校生たちは、11月14日から22日にかけて訪日し、東京で外務省を訪問した後、茨城県、埼玉県、大阪府、広島県、山口県で日本の高校における合同授業、部活動への参加、日本人高校生宅におけるホームステイなどが計画されていました。また、当該事業では、日本の高校生の中国訪問も行われています。
歓送会では、宮本大使の話に熱心に耳を傾ける高校生、同級生と記念写真を撮り合う高校生など、日本と変わらぬ高校生らしい様々な一面を目にしました。
私と話しをしたある高校生は、日本での生活に対する期待や不安、日本のアニメや電化製品等に関しての強い興味について話してくれました。また、中には流暢に日本語を話す高校生もおり、大変驚かされました。その生徒は、高校で、英語ではなく日本語を学習しているとのことでした。
私自身にとって、今回の歓送会は、中国人高校生と直に接する初めての機会となりましたが、直接会話をすることで、これまでも耳にしていた日本のアニメの人気等について改めて実感する機会となりました。
今回訪日する高校生には、日本人高校生との交流を通じて少しでも日本に対して興味を持ってもらうとともに、その体験を同級生との間で共有してもらうことが、日中青少年間の相互理解を促進するための第一歩となることと思います。青少年交流を通じて、日中間の友好と相互理解が一層促進されることを期待しています。

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