中国を知るためのキーワード
最終更新日:2007/08/21
[政 治]
両会
「両会」とは、「全国人民代表大会」(全人代)と「全国政治協商会議」(全国政協)の総称である。全人代は中国の最高議決機関であり一院制である。全国政協は、各党派、団体、民族、各界の横断的代表からなる国政への助言機関である。毎年春先(3月頃)の同時期に開かれる両会において、議案の審議採択と政策提言がなされ、その年の主要政策が決められる。
ちなみに、全人代の代表枠は省ごとに人口比例で決められるが、有権者数に対する人代代表定数は、都市部が農村部の4倍とされている。このほか、少数民族、解放軍、女性などの枠が設けられている。なお、県・郷級の人民代表は直接選挙で選ばれ、省・地級の人民代表は一級下の人民代表大会における間接選挙で選ばれる。
第11次五ヵ年規画(十一五)
対象期間は2006年から10年までの5年間。中国では、1953年以来、「五ヵ年計画(五箇年計劃)」を策定して、国づくりを進めてきた。第11期から「計画」という言葉が「規画(長期的ガイドライン)」に改められた。これは、計画当局が作成し実行できるのは、市場経済を前提とした上でのガイドラインの設定だけであるという意味を含むもので、中国経済は、計画経済体制から市場経済体制への移行がさらに進められる形となった。
2008年北京五輪、2010年上海万博を挟む「十一五」は、2002年発足の胡錦濤政権が掲げた「加速発展」から「協調安定」への転換を結実させたものであり、重点課題は、産業構造の合理化、三農(農業・農村・農民)問題の解決、都市化の推進、地域間の発展の格差の是正などである。
その内容は、持続的な発展を可能とするため、投資を抑え、国内総生産(GDP)成長率の目標を7.5%に設定し、GDP単位当たりのエネルギー消費を2005年末比で20%前後減らすことを明記。「資源節約型社会」構築を加速させ、持続可能な循環経済を発展させることを提示した。このほか、2010年までに1人当たりGDPを2000年の2倍に増加させる目標も提示。胡錦濤政権が掲げる「和諧社会」の実現や国際競争力の高い中国ブランドを持つ企業育成の必要性なども指摘した。同規画は、2006年3月に開催された第10期全人代で採択され、施行された。
3つの代表
中国共産党は、@先進的な生産力の発展方向、A先進文化の前進方向、B広範な人民の利益の3つを代表するという新しい理論。核心は、「広範な人民の利益」を代表すること。「中国共産党はプロレタリア階級のパイオニア」とした党の定義が改革開放以降の現実にマッチしなくなったため、私営企業主などを含む幅広いエリートを取り込んだ「国民政党」を目指して、画期的な修正を行った。2001年江沢民主席の演説をきっかけに全国キャンペーンが行われ、2002年11月の16期党代会で党規約に盛り込まれた。
科学的発展観
2003年10月の16期3中総で打ち出された胡錦濤政権の指導思想である。これまでの経済一辺倒への反省から、「以人為本(人間を大切にするの意)」の考えを基本に、経済発展と社会の全面的な進歩、持続可能な発展がうたわれ、@都市と農村の発展、A各地域の発展、B経済と社会の協調的発展、C人と自然の調和のとれた発展、D国内の発展と対外開放という5つのアプローチの統合発展という目標である「5つの統一的企画」が打ち出された。「科学的発展観」は、GDPのみを追求せず社会全体のバランスの取れた発展を目指す考え方であり、一部の人が先に豊かになることを推奨した「先富論」から「共同富裕論」への転換、環境、資源の収奪から自然と共生する持続可能な発展への転換を意味する。
小康社会
「多少の資産があり、生活に困らない」状態、すなわち「いくらかゆとりのある社会」を指しており、1979年に故・ケ小平氏が、中国が当面目指すべきレベルとして提唱した。2005年5月には、胡錦涛国家主席が2005年北京フォーチュン・グローバル・フォーラムの開幕式で、「21世紀の最初の20年間で、より高い水準の小康社会を全面的に建設する」という目標を改めて紹介。2020年にGDPは00年比4倍増の4兆米ドル、1人当たり3,000米ドル前後に到達させるという数字を挙げた。全体的にみれば中国の「小康の実現」は着実に前進している。しかし、富裕層が出現すると同時に、農村部を中心に生活の維持も困難な貧困層が存在するなど、経済格差の問題は深刻になっている。なお、「小康」とは経済状態あるいは生活状態を指し、病状などに関して「小康状態」と表現するのは、中国語として一般的でない。
和諧社会
2004年9月の16期4中総で初登場し、胡錦濤国家主席が2005年年頭の短いあいさつの中で重ねて強調した言葉で、2005年3月の両会で中国が目指すべき社会像としてクローズアップされた。「和諧社会」の骨子は、経済成長が生んだ貧富の格差などの諸矛盾を解消し、社会、自然、人の調和のとれた発展を目指すことで、胡錦濤政権のキーワードと言える。具体的には、@貧困人口の減少、A教育・医療状況の向上、B社会治安と炭鉱など安全生産の改善、C収入格差拡大の緩和などの目標が掲げられ、「十一五」でも取り上げられている。2007年全人代期間中、「和諧社会(調和のとれた社会)」という言葉が、新聞を賑していた。2005年全人代で初めて登場した「和諧社会」という言葉が社会に定着し、政府もその構築に向けて着実に動き始めていることがうかがえる。
自力革新(自主創新)
自前の技術・商品開発の重要性を強調するもので、「十一五」のキーワードの1つである。中国政府は、独自の知的財産権、ブランド力こそ国際市場における中核競争力と位置づけ、先端技術の開発分野で先進国に追いつくべく、国を挙げて取り組んでいる。中央政府の号令の下、各地方政府も各種の制度装置や政府調達などの手段を用いて、国内ブランドを推奨しており、外資の展開に影響を与えることが想定される。
一方、WTO加盟以降、中国当局は知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に従い、関連法制度の整備を進めると同時に、海賊版一斉摘発キャンペーンなどを行ってきたが、対策は依然不十分であり、世界最大の模倣品生産国となっている。2007年4月には、米国政府からWTOに提訴され、今後より実効性のある対策を講じる必要に迫られているのが現状である。
八栄八恥
胡錦涛国家主席は、2006年3月の全国政治協商会議第10期全国委員会第4回会議で、「八栄八恥」と呼ばれる道徳観を提唱した。内容は、@「祖国を熱愛することは栄光/祖国に危害を与えることは恥辱」、A「人民に奉仕することは栄光/人民に背くことは恥辱」、B「科学を尊重することは栄光/無知蒙昧(もうまい)は恥辱」、C「労働にいそしむことは栄光/労働を嫌悪することは恥辱」、D「団結と互助は栄光/他人を傷つける利己主義は恥辱」、E「誠実さと信義を守ることは栄光/利により義を忘れることは恥辱」、F「ルール遵守は栄光/法と紀律の違反は恥辱」、G「苦労をしのび奮闘することは栄光/奢侈と安逸に溺れることは恥辱」と、特に目新しいものはないが、国家主席が改めて道徳観を説いたことが注目された。
反腐敗
市場経済化の進展につれ、中国の政府機関等にも「拝金主義」が蔓延し、政治家や官僚が手中の権力を濫用して利権を得る等の腐敗行為が大きな社会問題になっている。2006年6月に、職権乱用・巨額賄賂の受理により北京市副市長が、同9月に、社会保険基金の不正流用により共産党上海市委員会書記が相次いで解任された。2007年の全人代では、最高人民検察院(最高検)により、2006年中の汚職など職務に絡んだ不正事件が3万3,668件に上り、4万0,041人が立件されたことが明らかにされた。また、中国共産党規律委員会の発表によると、汚職・賄賂により党籍を剥奪された党員は、1万1,000人に上った。
2007年「両会」期間中の世論調査の結果では、「強力な反腐敗、官僚への厳しい管理」が市民の最大の関心事の1つであることが明らかになった。こうした問題に対するに市民の目は厳しく、中国共産党や政府に対する信頼を揺るがしかねない問題になっている。こうしたゆゆしい現象にブレーキをかけるため、中国共産党は「党内監督条例(試行)」関連規定の起草を進めるほか、「中華人民共和国行政監察法」「中国共産党紀律検査機関案件検査作業条例」など重要法規の改正作業に取組んでいる。
[行 政]
三大重点政策
「西部大開発」
「第10次五ヵ年計画(00〜05年)」に提起された地域開発政策であり、東部沿海地区と西部内陸地区との経済格差是正を目的に導入されたものである。主な手法は、傾斜投資によるインフラ整備、環境保全にも配慮した「持続的発展」、外資投資奨励、東部と西部との協力などである。具体的なプロジェクトとして、「西電東送(電気の西部から東部への輸送)」「西気東送(天然ガスの西部から東部への輸送パイプライン)」「青蔵鉄道(青海−チベット道路)」などが進められている。
「東北振興政策」
中国政府が2004年の重要プロジェクトの1つに位置付けたものである。計画経済時代の桎梏(しっこく)から抜け出せずに停滞著しい遼寧省・吉林省・黒龍江省の東北3省の国有企業を、民間資本と外資の導入などによって市場メカニズムに適応した近代的企業に改革し、新型産業拠点にしていくことで、地域全体の再生を図るというものである。傾斜投資に頼らず、柔軟な政策の実施によることが特徴で、例えば、同地域の国有企業改革の環境整備として、年金制度など社会保険改革が全国に先駆けて行われたが、現在ではそれが全国に普及しつつある。
「中部崛起(くっき)」(中部地域振興)
改革開放政策の恩恵を受けて急速に成長を遂げた東部開放地域と西部大開発、東北振興政策の適応地域の間でリスト漏れしている内陸6省(山西・安徽・江西・河南・湖北・湖南)の経済発展に拍車をかける目的で2005年、中国政府が打ち出した重大な戦略。当該地域は中国における農産物、エネルギー、原材料の生産拠点であり、ハイテク、教育、人材面で優位性をもっていると同時に、豊富な自然と歴史文化資源を誇っている。現在、中国政府は中部地域のインフラ整備や経済社会発展の推進する施策を積極的に打ち立てている。
南水北調
中国北部の水不足を緩和するために、運河等を利用して、水資源が比較的豊富な南部(長江)の水を北部へ送り込もうという計画。既存の水路を利用する部分もあるが、全体としては国家規模の建設プロジェクトとなる。東部ライン、中部ライン、西部ラインの3つに分かれるが、計画が進んでいる東部及び中部ラインの一期工事だけでも1,240億元の投資が必要だとされる。一期工事は、2010年までに終了させて、北京・天津を中心とした華北地方の水不足を解決する予定。中国では、都市部だけでも毎年60億立方メートルの水が不足。また、すでに水不足による経済損失は年間100億元以上に上るとされている。
青蔵鉄道
青海省の西寧とチベット自治区のラサを結ぶ鉄道。1984年に西寧−ゴルムド間が開通した後、チベットへの鉄道延伸計画は中断していたが、2001年西部大開発の一環として建設が再開、2006年7月1日、ゴルムド−ラサ間の営業運転が試験的に開始された。世界最高標高(5,072m)・世界最長の鉄道(1,956m)、世界最高標高の駅(タングラ山駅、標高5,068m)など、多くの世界記録を持っている。また、レールには、永久凍土地帯の走行に対応するための融解防止策がとられており、車内には、高山の酸素不足に対応するための酸素供給装置やマスク式酸素ボンベが完備されているなど、さまざまな工夫が加えられている。鉄道開通は、チベット自治区や青海省への観光客数増加に大きく寄与しているが、一方、受入能力の超過、サービスの質の問題、周辺環境への影響など、課題も指摘されている。
三乱
中国では制度と規定が大まかであって、行政側の理不尽な運用や法的な根拠のない措置が民間の強い不満を買っている。その典型的な弊害が「三乱」と言われる現象である。
「乱収費」…行政が名目を付けて様々な手数料サービス料等を農民から徴収すること。
「乱割当」…むやみに金銭、物品、労力の供与を強いること。
「乱罰金」…法的根拠のない罰金を徴収することである。
この「三乱」が農村では農民にのしかかる負担となり、農民の離農や農業、農村の弱体化をもたらす結果を招き、経済面では投資環境へのマイナス評価に直結し民営企業や外資の意欲を鈍らせた。
政府が「三乱」の摘発と取り締まりを強化したため、ある程度収束が見られるものの、根本的な撲滅は難しいようだ。近年では、道路行政での「集金所の乱設置、料金の乱設定、乱罰金」、国有企業での「乱投資・乱担保・乱融資」、食品業界での「乱排列(ランキング)・乱評定・乱収費」、教育行政の「乱収費・塾の乱開設・補強授業の乱導入」、経済行政の「乱検査・乱評定・乱研修」など「新三乱」と呼ばれる現象が現れ、市民に批判されている。
三農問題
高度成長路線の陰に取り残された「農業・農村・農民」をめぐる課題を略して「三農問題」という。三農問題の解決が目指すものは、「農業の振興」「農村の経済成長」「農民の所得増と負担減」である。
中国政府は、2003年1月の農村工作会議で、三農問題は中国経済と社会の安定と発展を制約しかねない要因だとして、この問題を公式に提起した。以降、中央から関係部局に発する通達文で、その年の最重要課題が記載され、その年最初に発せられる「中央1号文件」では、04年「農民増収」、05年「農業総合生産能力の向上」、06年「新農村建設」、07年「現代農業の積極的発展」と、4年連続で農業問題が取り上げられている。
特に2006年からは、「十一五」の最重点課題と位置づけられ、新農村建設を通じて三農問題解決に向けた系統的な方針、政策、措置が打ち出される形となり、「2,600年間続いた農民課税に終止符」を打つ農業税の撤廃や農民にとって重い負担だった義務教育費の免除など画期的な政策が打ち出されている。
社会主義新農村建設
「和諧社会」実現に不可欠な8億人の農民と都市住民の貧富格差の是正を目指し、2006年からの「十一五」で「新農村建設」を新たに展開することが決まった。最重要課題と位置付ける三農問題解決に向けて、農業の発展と農民の生活向上に力を入れ、農村の経済力の向上を図るために、工業が農業を、都市が農村を支援する体制の構築を目標に設定した。この動きは「建国後第3の農村革命」と指摘され、農村部の教育や医療など社会事業のほか、インフラ整備など農村部の発展を重視する方針を打ち出している。
社会保険改革(セーフティネットの整備)
改革・開放による社会主義市場経済への移行に伴い、計画経済の象徴であった完全雇用・終身雇用システムが崩壊、以降、中国では、都市部を中心に社会主義市場経済に適応した新たな社会保障制度の構築が進められている。
一連の改革で特徴的なのは、第一に、「下崗(国有企業労働者のレイオフ、一時帰休)という言葉をやめ、計画経済期には存在しなかった「失業」という言葉を正式に規定し、失業保険制度と最低生活保障制度の創設したことである。第二に、従来は個人が帰属している企業・機関などの「単位」が賃金のみならず医療や年金等の福祉を保障していた実質上の国家保障制度から、国・企業・個人の三者負担による社会保障制度への改革に踏み切ったことである。1997年以降、個人口座制度が導入され、これと社会プール基金を結合させた新しい医療・年金保険制度が整いつつある。これは、資本主義的な所得再配分機能の確立を目指すことを意味するものであり、市場経済化の受け皿づくりとしての前進であると概ね評価されている。
しかし、都市部における社会保障制度の見直しに伴う個人負担増は、特に低所得者層に大きな打撃を与えている。特に高額な医療費用は、現在の社会問題の1つとされ、最近では、「看病貴・看病難(病気を診てもらうのが高い、病気を診てもらうのが難しい)」という言葉が紙面を飾ることが多くなり、従来の就業問題に代わり社会保障の問題が、市民にとって一番の関心事となっている。
他方、8億人以上を対象とする農村部の社会保障制度は、一部の地域において、国、地方、個人の三者負担による年金保険制度や初歩的な最低生活保障制度が整備されているものの、保障レベルは都市部のそれに比べ桁違いに低い実情である。
戸籍改革
1950年代初期、中国は都市部を中心として工業発展を最優先させる政策をかかげ、農村と都市の役割分担を明確にし、1958年に両者の人口移動を制限する「戸籍登記条例」を公布、以来きびしい戸籍制度が実施された。しかし1980年代以降、改革開放に伴う経済の発展を阻害する各種の弊害が露呈し始め、1990年代以降、人材の自由移動、労働力市場の形成を求めて、戸籍制度の見直しを求める声が高まり、2002年から段階的に戸籍改革が進められるようになった。
求職などのために都市に移り住んだ農民戸籍者は、2006年までに1億2,000万人に上り、農村戸籍ゆえに就労・社会保障・子女の教育などの面で不利な待遇を受けている。農村戸籍と非農村戸籍の区別をなくし、統一した戸籍管理制度を導入することが求められる中で、いくつかの省では農村戸籍が廃止され、戸籍移動に関する規制緩和が明文化されている。
一人っ子政策
過剰な人口が国の発展の妨げになるとして、中国政府は、1971年から「計画出産」を実施している。1979年からは、都市部住民と漢民族については一人まで、農村住民と少数民族に限り条件付きで2子または3子まで認めるとする「一人っ子政策」が導入され、違反した者には罰金や懲戒免職など、厳しい罰則が適応された。これにより出生数が3億人以上減少したとされるが、人口の高齢化(65歳以上人口は05年7.69%。20年には約12%、50年には約25%になる見込み)、男女出生比率のアンバランス(05年、119.9:100、正常値は102〜7:100)、「小皇帝」やニートの出現など多くの問題も発生した。
一人っ子政策については、近年見直しが行われつつあり、2002年9月から地方政府が第2子の出産を認める条例を設けることが可能になったほか、2004年7月からは15の省・市において、農村部の一人っ子の父母に、60歳から年間600元の奨励金を終身支給する制度が試験的に導入されるなど、「多産処罰」から「少産奨励」へと政策の転換が進んでいる。
なお、一人っ子同士が結婚した場合は第2子の出産が許されているが(双独政策)、北京市が実施した調査では、一人っ子男女のうち2人以上の子供を欲しいと考えているのは33.1%、既婚者に限っても35.9%という結果が出ている。
省エネ・排出削減(節能減排)
中国では、急速な経済成長を続ける一方、資源の浪費や環境破壊など環境問題が顕在化している。中国は、「第11次五ヵ年規画」中に、これまでの経済成長率一辺倒だった経済成長パターンから、循環型・資源節約型の、持続可能な発展を目指す経済成長パターンへの転換を図ろうとしている。
そのための具体策として、中国国務院は、2007年6月に、エネルギー消費、汚染物排出について、部門ごとに2010年までの節約・抑制目標と施策の詳細を盛り込んだ総合計画を公布した。この計画では、鉄鋼、石油加工、石炭、電力などエネルギー多消費型産業について、省エネ能力、汚染物排出量、老朽設備の廃棄などの数値目標が設定されているほか、汚水処理の拡大、ごみの再資源化の促進、正確な統計制度の整備などが規定されている。また、省エネ投資への減税など優遇税制を活用するほか、「環境税」の導入を検討する方針も示されている。今後は、温家宝首相をトップとする「国務院省エネ・排出削減工作指導グループ」を中心に、各地方政府を督励して、今回の計画の目標達成を目指す方針である。
[経 済]
社会主義市場経済
土地などの公有制の堅持を図ることによって社会主義のメルクマールを守りつつ、経済分野においては市場経済化を推進することを意味する。故・ケ小平氏が1992年春に南方地域を視察した際のあいさつ(『南巡講話』)で、初めて「社会主義市場経済」という造語を用いて市場メカニズムを活用して急成長する経済体制を肯定。同年秋に開かれた14期4中総の報告に正式に盛り込まれた。
以降、中国国内では、2001年12月のWTO加盟(中国語では「入世」)を経て、国有企業の分離と政府機能の転換に関連する法律体系の整備、産業の公正な競争力強化など、行政改革と併せ、社会各層に及ぶ改革が進められている。
マクロコントロール(宏観調控)
市場メカニズムの活用を基本として、マクロ経済の政策手段を用いて経済を運営することを指す。計画経済体制から市場経済体制への移行期に入った1990年代以降、政府計画によるコントロールが機能しなくなる一方、市場メカニズムによる自動調節も不十分であったため、経済が過熱したり混乱したりする状況がしばしば現れた。2003年初めから中国経済の急成長を背景に投資が加熱し、鉄鋼、アルミ、セメントなどの原材料の需要が高まると、中国政府は、投資プロジェクトの整理・減少、銀行の信用貸付に対する締め付け、土地収用に対する管理を強化し、特に地方政府が絡んだ工業団地への転用に歯止めをかけるべく、強力なマクロコントロール政策に踏み切った。しかし、経済成長率は、2003年から4年連続で10%超を記録しており、過熱気味の中国経済を適切な巡航速度に合わせるための難しい舵取りが続いている。
元の切り上げ
中国は2005年7月21日、対米ドル固定相場制度を廃止し、市場の需給を基礎とし、バスケット通貨を参考とする管理された変動為替制度を導入した。為替レートの合理的で均衡のとれた水準の試算に基づき、人民元の対米ドル・レートを2%切り上げ、1米ドルを8.11元とした。また、人民元の為替制度は今後、現在のような実質的にドルに固定した状態ではなく、バスケット制に移行し、レートは、人民銀行が毎日発表する前日終値から1日の許容変動幅(日本円、欧州ユーロ、香港ドルの3通貨については「上下3.0%」。米ドルについては、「上下0.3%」)の中での変動を認めることになった。なお、対米ドルの変動幅については、2007年5月21日から、「上下0.5%」に拡大された。今後、元取引の柔軟性が増し、元高ペースが速まることが予想される。
假日経済
連休による内需拡大を意味する。1995年に週休二日制が全国的に導入されて以来、2連休(中国語では「双休日」)は庶民のライフスタイルに大きな変化をもたらし、観光・レジャー産業の振興を呼んだ。2000年から政府はさらに消費の刺激による内需拡大をねらって労働節(5月1日)、国慶節(10月1日)の7連休案を正式に公布した。これによって、中国の人々は、春節(旧正月)と合わせて3つの7連休を享受するようになった。連休期間中は、全国的に旅行客が動き、観光、交通、サービス業などの産業に大きな効果をもたらし、「假日経済」という言葉が流行語になっている。ここ数年は、著しい所得増加もあり、連休を利用して海外旅行に出かける市民が急増している(06年3,452万人)。ちなみに、日本への中国人観光客数は、2005年7月に中国人訪日観光査証発給対象地域が中国全土に拡大されて以降、05年201,940人(訪日客総数652,820人)、06年297,025人(同811,675人)と順調に増加している(国際観光振興機構(JNTO)資料より)。ただ、団体観光旅行限定や厳格な査証審査など、依然規制が多く存在するのも現状である。
物権法
2007年3月に開かれた第10期全人代第5回会議において、物権法が採択された。中国には、物権法制定以前も、物権に関する規定が存在した。しかし、分野別に法律が定められており、統一的な法律は存在しなかった。また、改革開放以降、社会主義政治制度と資本主義的経済制度の乖離が進む中で、法制度としての私有資産保護、建物区分所有権、相隣関係、農民の請負経営権などの規定を盛り込む必要があり、今回の物権法制定に至った。
物権法は、総則・所有権・用益物権・担保物権・占有の計5編から成り、財産関係の基本法として、私有財産の平等保護の原則がうたわれている。これまで「公有制」を基本としてきた中国にとって、私有資産保護を明記した物権法の制定は大きな意義をもつと言える。また、今後も改革路線を継続していくことがうかがわれる。物権法は、2007年10月1日から施行される。
企業所得税法
現在、外資企業に対しては、原則企業所得税30%、地方所得税3%が、また一部外資企業に対しては、優遇政策により、15%や24%の税率が課税されている。
2008年1月1日より施行される「企業所得税法」では、外資企業は、統一的に25%の税率で企業所得税が課税されることになる。これは、33%の税率が適用されていた貿易関連企業やサービス企業にとっては、税率の引き下げとなるが、15%や24%の税率が適用されていた企業にとっては、税率の引き上げとなる。
また、企業所得税率の優遇措置は、産業優遇を主とし、従来の区域優遇は補助的なものになる。具体的には、条件に合致する小規模低利益企業や国家が重点的に支援する必要のあるハイテク企業であれば、それぞれ20%及び15%の低減税率により課税される。一方、企業が経済技術開発区などの特定区域に位置しているかどうかは考慮されなくなることから、税金面では経済特区、経済技術開発区などの特定区域に置く必要は薄れてくる。
[社 会]
農民工
農村から都市へ仕事を求めてやって来た臨時労働者のこと。実際には1年以上の長期にわたって、同一の都市で仕事を続ける人も多い。
農村人口の都市流入は戸籍制度によって規制されているが、1970年代末に人民公社が解体され、国家による労働力の全面配分方式と終身雇用制が崩壊したことにより、1980年代以降全国で大規模にわたる農業人口の都市流入が起き、2006年までに1億2,000万人に上っている。
当初は、都市インフラへの負担増や治安など社会的影響が懸念されたが、都市部の労働力不足を補うと同時に、地方へ資金や技術を持ち帰ることから、彼(女)らは「農民工」「打工者(出稼ぎ)」と肯定的に評価された。しかし、農民工は、低賃金と過酷労働といった不利な労働条件に加え、農村戸籍ゆえに、社会保障・子女の教育などの面で不利な待遇を受けている。
こうしたことを背景に、2003年以降、東南沿海地域の建設業・製造業などは、農民工の都市離れによる深刻な人手不足に見舞われた(「民工荒(民工ショック)」)。「民工荒」により、安価な労働力の無限供給が可能という幻想に警鐘が鳴らされ、就労・社会保障・教育機会の均等化など、あらゆる面での受け皿整備が急がれている。
労働契約法
2007年6月に開かれた第10 期全人代常務委員会第28 回会議において、労働者の権利保護の強化を盛り込んだ「労働契約法」が採択された。賃金の未払いや恣意的な解雇など不当な雇用を防止するのが狙いで、2008 年1月1日から施行される。
立法の背景には、これまで労働者の権利保護に関する法規が未整備であったことのほか、沿海部地域で企業が地方から働きに来る労働者を十分に集められないという現象(「民工荒(民工ショック)」)が広がっていること、労務形態の多様化に法制度が追いついていなかったこと等が挙げられる。労働者の権利保護が急務であることは、2007年6月の山西省における闇レンガ工場での未成年・知的障害者の強制労働事件からも明らかになった。
同法は95 条から成り、雇用後1ヶ月以内に文書による労働契約を締結しなければならないこと、職務に伴う危険やその防護策を契約に明記しなければならないこと等を義務付けている。また、労使間で「終身雇用」契約を結ぶよう促していることが特徴的である。
不動産ブーム・財テク(購房熱・理財)
1998年、都市部を中心に住宅ローンが導入されて以来、庶民にとって住宅購入が身近なものとなり、大衆向け住宅市場は成長し、中国全土はマイホームブームの全盛期を迎えた。また、財テク(「理財」)目的で2軒目以上の住宅を購入する者や海外からの投機目的で購入する者も多く、新規不動産価格は急上昇し、北京市などの大都市部では、住宅価格の高騰や空き部屋率から、不動産バブルへの懸念が高まっている。
政府は、不動産関連融資の引き締めや住宅ローン利率の引き上げなどにより、不動産ブームの過熱にブレーキをかけているほか、2006年5月発表の「住宅供給構造を調整して住宅価格を安定させることに関する意見」において、不動産市場の秩序を確立するとともに、投機目的の住宅物件購入を抑制し、低価格の住宅物件の建設を促進するという方針を打ち出している。
また、不動産ブームのほか、近年の経済成長に伴う所得の向上により、市民の間では、株式や投資ファンドへの投資などによる財テクがブームになっている。かつて、中国人の間では、自身の老後や子供の将来などを考え、銀行に貯蓄をする人が多かったが、最近では、株式や投資ファンドによる財テク意識が徐々に浸透し、多くの人が、「『理財』なくして、儲けなし」という言葉を覚え、ハイリスク・ハイリターンの投資に目を向けるようになっている。
高考・考研
中国の大学入試は、「全国高等学校統一考試(高考)」と呼ばれ、例年6月に全国で一斉に実施される。かつての科挙制度には及ばないものの、毎年激しい受験戦争が繰り広げられている。高考の特徴は、同じ大学でも、各省・自治区・直轄市ごとに募集枠や合格最低点が異なり、大学所在地住民に多くの定員が割り当てられることである。地方住民にとって、北京や上海の大学はかなりの難関となっており、また農村部の若者にとっては、高考が、大都市の都市戸籍を手にできる絶好のチャンスにもなっていることから、有利な地域の戸籍を手にする目的の「高考移民」現象が社会問題になっている。
なお、中国政府は、1999年に大学の募集枠を拡大。以降、募集定員・受験者数ともに毎年30〜40%ずつ増え、結果、2005年末の大学生総数は1,560万人に達している。また、粗入学率(在学生数が18〜22歳の年齢層に占める割合)は、1998年の9.8%から、2002年には大学教育の大衆化の指標とされる15%を突破、2006年には22%に達し(北京や上海では70%台)、中国における高等教育は着実に大衆化への道を歩んでいる。こうした状況から、近年は、大卒でも就職難にさらされるようになり、大学院進学の希望者が増加、「考研(大学院受験)」がブームとなり、大学院が狭き門になっている。
希望工程と私立学校
政府が義務教育の支出に対処しきれず、生徒が雑費を負担する仕組みになっているため、貧困地域では中途退学に追い込まれる子が多く存在する。このため、貧困地区の児童を復学させるための募金活動が「希望工程」である。貧困地域とは、一人当たり年所得が683元に達していない地域。これらの地域の人口は2005年の統計で約2,400万人に上る(04年から減少)。「希望工程」は1989年10月から実施され、2005年末までに22億元を集め、260万人の貧困家庭出身の児童を復学させ、1万1,000校余りの希望小学校を建設している。募金主体は中国青少年発展基金会で、特定の児童を支援するためには年間400元、希望小学校を建てるためには20万元が必要とされる。また、小学校のほか、中学校、高校と大学において「希望の星」奨学金を設け、「遠隔教育計画」「農村教師研修計画」も実施。2005年末まで、12万1,300人の貧困家庭の中高校生や大学生が同奨学金を与えられ、貧困地域の教師1万名が研修を受けている。なお、これらについては、2006年から貧困地域の義務教育の学費、雑費を免除し、義務教育費用を中央政府と地方政府が分担することとされたことから、今後の動きが注目される。
一方、1990年代の後半から経済の発展、市場化等を背景に、国家教育部(文部科学省に相当)は教育分野における民間投資の参入を奨励。教育の多様化したニーズに応じて、一流の施設を誇る私立学校や英語で授業を行う学校などさまざまなタイプの教育施設が出現し、経済的にゆとりのある層や、進学率一辺倒の画一的な公教育に疑問をもっている人たちの間で人気を博している。しかし、学費は公立校の数倍以上高く、庶民には「貴族学校」と呼ばれている。
(付録)北京五輪・上海万博の概要
五輪開催、万博開催は、ともに発展途上国で初のこと。中国にとって国際イメージ向上の絶好の機会であるとともに、その経済効果にも大きな期待が寄せられている。五輪・万博に向け、現在中国では、大規模な再開発や交通網の整備、そして市民マナーの向上に向けた取り組みが行われている。
北京五輪(北京奥運会)
会期は、2008年8月8日から24日までの17日間。“One World One Dream”のテーマの下、200を超える国・地域が参加し、28競技・302種目が、北京市内31、他都市6の計36競技場で開催される。北京市内では11の競技場が新たに建設され、中でも北京五輪の象徴で開幕式が行われるメインスタジアム「国家体育場(愛称:鳥の巣/バード・ネスト)」、斬新なデザインな国家水泳センター(愛称:水立方/ウォーター・キューブ)は有名である。
北京五輪は、「節約五輪」の精神の下、準備が進められており、総運営費は、約20億米ドル(約2,400億円、アテネ五輪約24億米ドル)が見込まれている。また、「クリーン五輪」実現に向けた環境・エコ対策も進められており、五輪選手村には太陽エネルギー設備を導入することとしている。また、2007年末までに、20項目以上の環境保護に関する大規模プロジェクトを実施し、北京市内の緑化率を50%までに引き上げることとしているほか、市内のホテルから歯ブラシやシャンプーなどの客室備品を撤去し、タオルやシーツなどの交換回数を減らすよう指導するなどの取組みが実施されている。
なお、「オリンピック競技場」「五輪特許商品専売店」「五輪マスコット販売店」「北京の観光名所」など、北京五輪関連の情報は、北京五輪の公式サイト(http://www.beijing2008.com/)から得ることができる。
上海万博(上海世博会)
会期は、2010年5月1日から10月31日までの半年間。上海市南部・黄浦江を挟む浦東・浦西地区で開催される。上海万博は、大阪万博(1970年)を超える万博史上最大規模のものを目指しており、総入場者数は約7,000万人(愛知万博の3倍以上、万博史上最多)、会場総面積は約530ha(同約3倍)、総事業費は286億元(約4,290億円、同約2.4倍)と見込まれている。
上海万博では、「より良い都市、より良い生活(Better City, Better Life)」というメインテーマの下、適度な経済発展、コミュニティの再構築、都市と地方の連携など、調和のとれた都市像について全世界にアピールするとともに、都市生活をめぐる諸問題の解決策を示すことを目標としている。
主な施設として、「都市発展における中華の知恵」をテーマとした『中国館』、「地球・都市・人」「未来都市の探索」「都市文明の足跡」「世界展覧博物館」から構成される『テーマ館』、また、万博初の試みとして、「持続的発展とエコロジカルな都市」をテーマに、都市問題の解決に取り組む都市の模範的事例が紹介する『ベストシティ実践区』が設置される。日本政府も、民間・国・地方自治体が三位一体となり、「日本政府館(パビリオン)」を出展することを表明している。また、『ベストシティ実践区』の対象は、地方自治体とされており、そのいくつかは公募により選定されることから、日本の地方自治体の参加も予想される。

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